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高森明勅
2013.6.18 16:53

皇室への勘違い

皇室をめぐり初歩的な誤解が思いの外、
広く蔓延しているのではないか。

例えば、大切な皇室祭祀。

その本質は、「天皇の祭祀」たる点にのみ存する。

皇后陛下はじめ皇族方のご参列は、
あくまで第二義的な位置付けにとどまる。

従って、ご療養中の雅子妃殿下が十分ご出席出来なくても、
祭祀の本義には関わらない。

にもかかわらず、
恰かもその事が皇室の一大事であるかのように
言い募る向きが一部に見られるのは、見当違いも甚だしい。

またご公務についても、皇室の責務として、
どうしてもなさらなければならないのは、突き詰めると、
憲法に定める天皇の国事行為のみ。

あとは、外国からの要請を除けば、
国民からの願いにお応えになったものか、
国民へのご厚意でなさって下さっているものだ。

だから、国民の側で不足を申し上げるのは、筋違いと知るべきだ。

『週刊ポスト』の記事で八木秀次氏は、
「雅子妃が療養を続けたまま皇太子殿下が天皇に即位された時、
ご夫妻が十分に天皇皇后としてお務めできるだろうか、
という懸念が国民から出てくるのは当然」と述べている。

「十分に…お務めできるだろうか」
とは何たる思い上がった言いぐさか。

皇太子殿下が即位された時、憲法に定める国事行為を
十分なされることが出来ない、などと考える者がどこにいようか。

八木氏もさすがに、そんなことは考えていないだろう。

ならば、あとは原則、国民の依頼によるか、
ご厚意によるものだから、お気持ちが向けば、
お出来になる範囲でなさって戴ければ、
それで十分有難いことなのだ。

八木氏は、重大な勘違いをしているのではないか。

近来、八木氏に限らず、
自分たちは皇室に対して何のお役にも立てず、
或いはお役に立とうとすら考えたことがなく、
ひたすら皇室に要求ばかりする、
甘ったれ思い上がった醜い根性だけが目立つのは、
残念で恥ずかしいことだ。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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